2024/10/12

"農民心理の研究" の著者の農民理解について・・・

     鎌田正忠著 "農民心理の研究" を読んでいると, なにとなく違和感を感じざるを得ません.

    それは, "農民心理の研究" 成果の内容の是非に付いてではなく, 農民の心理を研究する鎌田正忠氏の, 農民理解について・・・. 鎌田正忠氏は, 農民に対して, どのような認識と理解をもって,この本を書いているのか,鎌田正忠氏の農民観について, 批判・検証をする必要を感じ始めたからです.

    賀川豊彦の "貧民心理の研究" と同質の論文ではないか, 賀川豊彦が都市の "貧民" について書いたのと同じく, 鎌田正忠氏は, 地方の "農村" について書いたのでは・・・?

    というのは, 近世幕藩体制下において全国いたるところで農書が書かれました.私はそのうち東山道に属する地方・諸藩の営農家・篤農家によって書かれた農書を集めて, 読み, それを参考にしながら, 標高550mの湖南高原の棚田と段々畑で有機無農薬でコメと野菜を栽培していますが, そこで描かれている江戸時代の農民の常態, 生活と暮らしとの間におおきな隔たりを感じるからです.

    鎌田正忠氏の "前理解" は, 左翼主義思想の差別思想である "貧農史観" や "賤民史観" に汚染されているのではないかと危惧の念を持ち始めたからです.

    世の中には, 心理学を専攻し, 応用心理学のプロを自称し, 一般人の心理状態を解析,独特のラベリングをしてみせる学者・研究者・教育者が多いのですが, 本質的に, ひとのこころは謎であり, 他者から読み解かれることはない・・・, と私は思っています. それを私に教えてくれたのは, スイスの心理学者であり哲学者であるアミエルの, 死後に出版された
 "アミエルの日記" です. 高校生のときから, 私は, 人間を理解するには, 心理や感情ではなく, その人が誰の目にみてもわかる言葉と行為を観察して判断する必要があると思って来ました. 心理学を専攻したひとは, 応用心理学や臨床心理学のように他者のこころを自由に操ろうとする人がいますが, 私はそれは人間の身の程知らずの傲慢のひとつであると思っています. 誰も, 他者のこころを操作したり改竄したりすることはできません. 他者のこころを操作したり改竄したりすることができると思っていたり, 日頃そのテクニックを利用して他者のこころを意のままに操作したり改竄したりしてきたひとは, 自分もそうされるのではないかと脅迫観念に自ら囚われている場合も少なくありません.

    宗教嫌いの私が, 聖書の神を信じ, 日本基督教団の牧師になったのは, 聖書信仰が他の様々な宗教と異なり, 宗教的魔術や呪術,怪しげな宗教儀式を否定し,そこから自由になって, 聖書の神の言葉にしたがっていきる理性的信仰だったからです. 聖書によると, 人のこころは測りしれない. しかし, ひとが, 本人さえ自覚することのない, こころの奥の奥で思っていることを知ることができるのは, 主なる神さまだけ・・・.     

    鎌田正忠著 "農民心理の研究" を読むときにも注意が必要・・・.

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