磯村英一・一番ヶ瀬康子・原田伴彦編 "講座 差別と人権 6底辺社会" (1985) のなかで, 底辺社会に数えられている人々は,
農民
漁民
炭鉱労働者
工場労働者
都市下層社会の住人
原発被曝労働者
日雇労働者
中国帰国子女
冤罪被害者
外国人労働者
40年前に出版されたこの本の分類にしたがえば, 2013年, 日本基督教団の隠退牧師になり, 東北福島の妻の実家のある郡山市湖南町赤津村に帰郷・帰農した妻と私は, "農民"・・・. 日本の所得税法上では, 妻と私は, "農家"・"農業"を名乗ることができないので, 厳密な意味での "農民" ではありません. ただ, "百姓" は職業名ではないので, 使いたければ誰でも自由に勝手に使うことができます.
典型的な農村的地域社会の中に身を置いても, 生活のための収入源は, 湖南町赤津村に100%依存していませんので, 湖南町赤津村の経済的枠組みの外の住民・・・.
"講座 差別と人権 6底辺社会" (1985) によると, "農民に対する封建思想とその施策が基層となって, 明治移行の近代にも '農民差別' が引き継がれ, 今度は地主対小作の関係の中で,'農民差別' が再生された・・・"."幕藩時代においては・・・農民の集合体であるところのムラ社会も,いくつかの百姓階層から成る,れっきとした階層社会であった・・・" そうです. "いくつかの階層社会" は, "郷士格の富農" ⇨ "肝入百姓" ⇨ "本百姓"⇨ "平百姓" ⇨ "水呑み百姓" ⇨ "住込み農業従事者" (作男・作女:農奴) によって構成されていたそうです. 明治以降,近代になると, "地主" ⇨ "自作" ⇨ "小作" の三階層に再編成されたそうです.
妻のふるさと・湖南町赤津村では, 農民・農家の間に, いまだにこの "身分制=階級社会" ,"屈辱の歴史" (被差別部落の側も自分たちの歴史をそう認識している) が継承され, "農民差別" が息づいているようです. 妻と私が, "ここらのもん" であるプロの農家から, "よそもん" のアマの百姓として, 馬鹿にされ, 排除・疎外され, 誹謗中傷・罵詈雑言にさらされている背景には, 農民による農民に対する "差別意識" があるのでしょう.
日本の社会から "部落差別" がなくならないのは, 日本の社会が, 様々な差別が輻輳・錯綜する差別社会だから・・・.東北地方に "部落差別" がないと言われるのは, 東北地方には "部落差別" に匹敵する, 厳然たる "農民差別" が存在しているため, "部落差別" が相対的に影を潜めているからでしょう.
"部落学序説" の著者である私は, 日本の差別思想として, "賤民史観" だけでなく, "貧農史観" についても批判しています.
2024/10/10
農民も底辺社会の住人・・・
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