2025/10/11

地下足袋を履きゲートルをまいて野良着姿で電車に乗って・・・

    日本基督教団の牧師になるために, 鶴川学院農村伝道神学校に入ったとき,  私は, 生まれてはじめて鍬で土を耕しました.

    こどものころ鍬を使ったことがないわけではありませんでした,こどものころは鍬を使って, 瀬戸内の遠浅の海で干潮のとき潮干狩りでアサリを掘り起こすときに使用していました. 硬い畑の土を鍬で耕すのはじめてでした.

    農村伝道神学校で座学の"農業概論" を教え, 実学の "農業実習" を指導しておられたのは,九州大学農学部を出て, 関東学農会の事務局長をされていた井草正先生・・・. あるとき, 農村伝道神学校の林業の実習林の下草刈りに行くと言われるので, 井草先生に引率されて,菊池君といっしょに電車に乗り込みました.

    そのとき,私は,実習林につくとすぐ作業にとりかかれるように,地下足袋を履いてゲートルをまきつけ,上下農作業着を身にまとって電車に乗りました. 通勤時間とあって,電車は満員・・・. すると, 生まれと育ちが八丈島で, 東京都民であることをいつも誇っていた菊池君が,"吉田君が変な服装で電車に乗るから,満員電車なのに,僕達のまわりだけ空間ができてる・・・" と話していました. 菊池君は,岡山の瀬戸内海の海辺の町で育った田舎者の私をもてあましているようでした.

    白河についたとき,最初に井草先生が連れて行ってくれたのは実習林ではなく,白河めぐみ学園でした. 
 白河めぐみ学園は, "児童福祉法にもとづく、知的障害を持った児童を対象とする知的障害児入所施設"だそうですが,その玄関に入ると,建物の奥から,廊下を走ってくる男の子がいました. 2本の鼻汁をたらしなが,すごい速度で走って来ます. その子が転んではいけないと思って,私は,腰を落として,全身を投げかけてくるその男の子を受け止め抱き上げました.  その男の子のあとからやってきた白河めぐみ学園の園長先生は,  私の姿をじろじろ見ながら, 私に語りかけて来ました. "もしかしたら,君は,その姿で東京からやってきたのではあるまいね・・・" .私は,神学校のある町田から白河までこの姿できましたと答えました.すると園長をされている牧師さんはこんなことを話しはじめました.  "この男の子は,学園にだれかがやってくると,うれしくなって,走りよって行くんです. 鼻水をたらして近寄ってくるこの子をみるとみんな避けるんです. しかし,君は,この男の子を受け止め抱っこしてくれました.この男の子を避けなかったのはあなたがはじめてです. 神学校を卒業したら, この白河めぐみ学園で一緒に働きませんか? 私たちは,あなたのようなひとが現れるのを待っていたのです" .

    私は, 知的障害児とかかわることはほとんどありませんでしたが, 一緒に白河めぐみ学園を尋ねた菊池君は, 知的障害児をもっている女性と結婚して,その子を自分の子として育てました.建物の奥から廊下を走ってくる男の子を私が受け止めてやらなかったとしたら,私のかわりに菊池君がその男の子を受け止めることになっただろうと思いました.
 

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