2024/10/08

たまたま "低位" に置かれた人びと・・・

    磯村英一・一番ヶ瀬康子・原田伴彦編 "講座 差別と人権 6底辺社会" のなかで, 部落社会と底辺社会というふたつの概念を峻別しています.

    部落社会は底辺社会と重なるところはあるが, 部落社会は底辺社会ではない.

    底辺社会の人々は, "社会のメタボリズムのなかでたまたま底辺に置かれた人びとである. 同和問題の対象は, 身分と居住が体制として定まっている. ・・・, たまたま病気とか失業とかが原因となって, 最低の生活に転落したのではない. 人びとが, "たまたま" "底辺社会" の住人になるのは, "貧困 (低所得)・失業・疾病等々" が原因である・・・. 

    私の父は, 倒産後, いろいろ職業を転々としていましたが, 倒産の原因が市税の強引な取り立てにあったことが証明され, その代償として市の水道局に勤務することになりました.  しかし,高年齢で市の職員になったことで, "貧困 (低所得) " を余儀なくされました.そして, 貧困と病気の悪循環のなかで苦しむ父の姿をものごころついたころからずっと見て育ちました.

    高校3年の1月父が脳梗塞で倒れ,"底辺社会"を生きた父の苦しみは, 母と私と妹の上に重くのしかかってきました. 私は大学進学を, 妹は高校進学を断念し, 弟を中学・高校へと進学させ,弟はさらに大学へ・・・.

    私はその間子供の頃から患っていた病気を克服すべく手術を受け,普通の人と同じ様に働くことができるようになったので, 専門商社に転職,高収入を得て,底辺社会のなかで苦闘してきた傷跡を修復し,妹を父親代わりに嫁に出し, 父が倒れてから10年後, 母が長年勤めていた会社を退職, その退職金の半分を年金受給資格を得るためにおさめ,母が弟が帰ってくるまで自立して生活することができるようにして, 私は,日本基督教団の牧師になるために鶴川学院農村伝道神学校に入りました.

    そのとき推薦状を書いてくださったのが, 鶴川学院の理事長をされていた日本基督教団富士見町教会の島村亀鶴先生でした. "君はいい牧師になれる・・・" というのが, 推薦状を書いてくださった理由でした.島村亀鶴先生, "あなたのおかあさんと私は同郷のよしみ" と話しておられましたが,同郷とは四国出身という意味あいでしかありませんでしたが・・・.

    高校1年生のときから, 新聞で朝日訴訟に関する報道を目にしていましたが, "日用品費月600円はすこぶる低いが、不足額は70円に過ぎず憲法第25条違反の域には達しないとして、原告の請求を棄却した" 事件は,国と社会と人々の "冷たさ" を実感させられ, 国と社会と人々に依存することのないように自主独立して, 民法の扶養義務にしたがって, "底辺社会" から離脱することを決心しました. 高校2年生の3学期, 高校の裏にあった竜王山の麓の Sweden Covenant Missionの教会に通い, 宣教師から信仰と神学を学ぶ前の話しです. 

    "部落社会" が "底辺社会" ではないことは, 大阪市立中学校の事務職員をしていたときに学費免除の申請の妥当性を調べるために訪問した大阪の被差別部落の経済状態,西中国教区部落差別問題特別委員会の委員をしたときに参加した同和対策事業の先進地視察で見た豪邸が並ぶ同和地区の姿を見て,"部落社会" の問題は, "底辺社会" の問題ではないと, 
磯村英一・一番ヶ瀬康子・原田伴彦編 "講座 差別と人権 6底辺社会" の見解の正しさを確認しました.

    被差別部落の人々が受けている差別は "階級差別", 底辺社会の人々が受けているのは "階層差別", 両者を混同してはならないと・・・.
       

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