一昨年の共同作業の草刈りのとき, 電気柵を設置しているにもかかわらず, イノシシ被害にあった田を見せてもらいました.
棚田の田に立てられた支柱の下を掘り起こし,電線ごと支柱を倒され, 田に侵入され稲穂を食べられたそうです. どうして, そのような被害が発生したのか・・・? その棚田の田は, 除草剤が散布されて, 草1本生えていませんでした. 徹底的に農作業が省力化され, 棚田の田に時々しか来ないのだとか・・・.
それで, 同じ棚田の田でも, 妻の実家の棚田の田と,その農家の方の棚田の田とでは,電気柵の設置の仕方は同じでも管理の仕方が異なることに気づきました.妻の実家の田は, 毎日, 水管理や田の草取りに出かけます.そのとき,必ず, 上段・中段・下段の田の周囲に張り巡らせた土手上の畔道を歩きます. しかし,電気柵を張ってもイノシシ被害にあった田の持ち主の農家は, 時々しか, 棚田の田におとずれることはありません.
イノシシは, 電気柵が恐くて近寄らないのではなく, 電気柵を設置している人間が怖いので近寄らなくなるのです. イノシシも, 他の野生動物と同じように, 人間を避けようとします. そのイノシシが人間を感知するのは,人間の匂い・・・. 毎日, 棚田の田の土手のあぜ道を歩くことで,人間の匂いを電気柵の周辺に振りまいているのです. 人間の匂いがする棚田の田の電気柵には, イノシシは近づかなくなります. それにひきかえ, ほとんど誰も来ない棚田の田の電気柵は, イノシシにとって何も恐くはなくなるのです. 鼻で電線に触れなければ, 電気柵の電流で, "ドカーン" と頭を棒で叩かれるような衝撃を受けることはなくなるので・・・.
田の草をとっているとき, 汗で濡れた麦わら帽子が電気柵の電線に触れたとき, 私は, 電線に手で触れたときのような, ビリビリとして衝撃ではなく, "ドカーン" と頭を棒で叩かれるような衝撃を受けました. 電気柵の衝撃を体験したければ, イノシシと同じ姿勢で, 頭に水をかけて, 土に両手をつけて,頭を伝線に接触してみれば, イノシシが受けることになる衝撃を経験することができるようになります. しかし, 私と同じ体験を追体験することはおすすめできません. 電気ショックで脳が破壊される可能性もなきにしもあらずですから・・・.
イノシシによる被害を防ぐために電気柵を設置するのは効果がありますが, その効果を持続させるには, 毎日, 電気柵の様子を見に出かけて,点検, 電気柵の電線の下に草が生えすぎていないかどうか, 雑木林の枯れ枝が電線の上に落ちていないかどうか, 保守・点検する必要があります. そうすることで,電気柵の電線のまわりに人間のにおい付けをすることが出来ます. 野生動物のにおいづけに対抗するには, 人間の側も匂い付けを有効に利用する必要があります. 電気柵を突破して, 稲田に侵入してきたイノシシのからだに触れた稲穂は臭くて食べれません.
素人百姓の私の推薦図書
江口祐輔監修 "最新の動物行動学に基づいた動物による農作物被害の総合対策" (誠文堂新光社, 2013年刊, 2000円+税)
0 件のコメント:
コメントを投稿