2023/02/23

日本基督教団西中国教区の山口の小さな教会の牧師をしていたとき経験した摩訶不思議なできごと・・・

西中国教区議長:君は、神の召命を信じているのか?
筆者:はい。
西中国教区議長:君に赴任してほしい教会がひとつあるのだけれど、神の召命だと思って赴任してくれないか?
筆者:どういうことですか?
西中国教区議長:赴任してくれると承諾してくれたら、その教会がどういう教会であるかを話す。
筆者:教区議長がそこまで言われるなら赴任してもいいかと思います。
西中国教区議長:その教会の前任者が、自害して無牧だ。牧師が自害したということで、その教会員はショックを受けている。4〜5年、教会の再建にがんばってもらって、再建できなければ、牧師が自害した教会に希望はないから、教会を閉鎖してほしい。そのあとの君の任地は教区として考えるから・・・。

実際に、西中国教区のその教会に赴任してみると、周辺の教会の牧師たちから、誹謗中傷・罵詈雑言を投げかけられる始末・・・。<前任者が自害した教会で、伝道と牧会ができるなんて傲慢だ! 傲慢だから、神にも神学校にも見捨てられて、前任者が自害した教会にのこのこ赴任してくることになるんだ!>

赴任してまもないときに、筆者、その教会は、前任牧師が自殺した背景を知ることになりました。自殺した前任者は、いわゆる社会派といわれる牧師で、隣市の部落解放同盟の運動家とも行動をともにしていたようです。反天皇制・反基地・反核運動などに深くかかわっていたようですが、教会関係者が絡む不慮の事故でなくなったそうです。それを、教会の役員は、知人の警察官に依頼して<自殺>として処理してもらったというのです。教会員は、筆者に、社会派の牧師としてではなく<純福音>の牧師として伝道・牧会してほしいというのです。筆者、間髪を入れず、<いいですよ。この教会を社会問題とは距離をおいて、福音伝道優先の純福音の教会にしましょう>と承諾したのです。そのときの、教会員の喜ぶ顔・・・。

そして、筆者、その教会を純福音の教会にすべく、次から次へと提案していきました。まず、主日礼拝と聖書研究祈祷会を守ること、そこで、純福音の聖書理解と生き方を身につけましょう。市の全域にトラクト配布して伝道、そのためにも、教会員は十一献金にはげみましょう。・・・、しかし、そのことが摩訶不思議な出来事へと発展していきました。

トラクト配布の割当をしたとき、ある教会員は、<今度来た牧師は、私に、被差別部落に入って、一軒一軒、トラクトを配布しろという。被差別部落の人々にも伝道しろというなら、わたしは、主日礼拝にも出たくないし、信仰生活もしたくない・・・>と言い出したのです。教会も、被差別部落にたいして差別意識を持っているのかと思うまもなく、教会員の半数は被差別部落出身者かその関係者であるというのです。その被差別部落出身者とその関係者から、<牧師は、純福音の教会の信徒は十一献金をしなければならないという。被差別部落出身の信徒に献金を求めるのは、牧師が被差別部落の人々から搾取するのに等しい。そんな牧師が伝道・牧会している教会の教会員でいたくはない・・・>といって、いろいろな対話が行われたにもかかわらず、被差別部落出身者とその関係者である教会員は、教会を離脱して、他の教会へ転籍・転会していきました。分区の教会と牧師をまきこんで・・・。

その決定的なきっかけになったのは、部落解放同盟某支部の支部長の従弟妹にあたる教会員が、<牧師に、神の愛があるなら、この借用書に金額をかかないで署名・捺印をして、わたちたちが自由にカネを借りれるようにしてほしい>と要求してきたのです。筆者、<私は神ではありません。説教で、神の愛を信じて一緒に生きていきましょうとは説教していますが、神にかわってあなた方に金銭を都合することはできません>と断りました。役員会で審議して、教会のお金を、牧師を除くすべての教会役員が連帯保証人になって貸し出すこといなりましたが、部落解放同盟某支部の支部長の従弟妹にあたる教会員によって、<今度来た牧師には愛がない。信徒がお金に困っているのに、助けてくれない。そんな教会の信徒でいても意味がない>と、被差別部落出身とその関係者の他の教会員に働きかけて、半数の教会員が離脱していったのです。分区の先輩牧師たちも、<私達の教会の信徒が同じようにお金を貸してくれといったら無条件に貸す。吉田牧師はほんとうの牧師ではない>と筆者を批判し、教会を離れていった信徒をそれぞれ受け入れて行ったのです。教会の役員会は、誰ひとりとして転籍・転会の推薦状は発行しませんでした。

そのなかで、教会役員会は、牧師である筆者に、副業を持つことを要請してきたのです。それで、筆者、ワープロを身に着け、ワープロ速記の副業をはじめ、パソコンを身につけ、プログラミング・システム開発のしごとをはじめたのです。そのことがきっかけで、山口県東等産業技術学校や山口県東部女性就業センターで情報処理関連の資格取得講座の講師をしたり、山口県立高校で情報教育アドバイザーをして、被差別部落出身者とその関係者である教会員が離脱したあとの教会を維持してきました。あとに残った信徒たちは、こころにのこる誠実な信徒の方々ばかりでした。

日本基督教団西中国教区の山口のちいさな教会の牧師をしていた30年間、筆者と妻は、被差別部落出身者とその関係者から<献金>という<搾取>をすることはありませんでした。隣の隣の市の、部落解放同盟新南陽支部の方々が1年に1度、クリスマスイブ礼拝に参加されるようになったのは、教会の被差別部落関係者が離脱していったあとでした。

摩訶不思議、摩訶不思議、いまだに摩訶不思議な山口の地での30年間でした。山口の地をはなれるとき、教会役員会の要望で、教会の閉鎖予定5年を大幅に延長して30年後に閉鎖して、教会を後にしました。退職金は全額放棄、教会の不動産・流動資産は、包括団体である日本基督教団に寄付をしました。これも、教会役員会の要望・・・。被差別部落出身者とその関係者は、<わたしたちがこれまで献金したものも入っているから、吉田牧師が辞任するとき、この教会から一銭も持ち出させない>と常日頃公言していましたので、教会役員会は、<この30年間、神さまは牧師先生を守ってくださったのですから、退職金を放棄して隠退牧師になったあとも、神さまは必ず守ってくださると信じています>と話していました。

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