朝、ヴィトゲンシュタイン著『哲学探究』を読んでいましたら、<他人には理解できない言語>として、<自分の内的経験を――自分の感情や気分などを――自分だけのためにかきとめたり、しゃべったりできるような言語>を取り上げていました。
筆者の座右の書である、スイスの哲学者アミエルの『アミエルの日記』は、他者が読むことを前提にしていない、哲学者・アミエルの独白の日記です。ということは、『アミエルの日記』は、<他人には理解できない言語>の典型・・・。
今日、ウクライナの首都をたずねて、その大統領を独・仏・伊の3首脳が訪問したそうですが、ドイツ・フランス・イタリアといえば、アミエルの祖国・スイスの4つの公用語のうちの3つ・・・。ドイツ語・フランス語・イタリア語・・・。それらの言語の背景には、ドイツ精神・フランス精神・イタリア精神が存在しています。スイスの哲学者・アミエルは、それらの精神を比較研究することができる立場にあったのでしょう。
哲学者・アミエルは、<フランス精神>を酷評します。<フランス精神>は<形式>を尊重し、フランス人を相手に<国家>について論ずれば、その思惟は常に<主題の外に留まり・・・主題の神髄にまでは入っていかない>。<主題の内面に立ち入って理解しようとは求めず、ただ何か体裁のいいことを言おうとするだけ・・・>。<最も美しい言葉>ですら<薄っぺらな空っぽのものになる>。<抜け目なくちくりと刺すが、しかも決して突き通さない>、<事実のありのままを静観するのに必要な尊敬心、超利心・・・を具えていない>。<フランス精神>は、<哲学的精神ではなくて、出来損ないの贋造である>。<どんな問題を解決する助けにもならず、生きている複雑な具体的なものを把握する力もない>。<抽象はフランス精神の原罪であり、空威張は矯正のできない癖であり、体裁性は宿命的な限界である>。
ウクライナを訪問した、フランスのマクロン大統領、古き<フランスの精神>を超克した人であったらいいのですが・・・。
2022/06/16
他人には理解できない言語・・・
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