2022/09/26

少数者の立場に立つとき・・・

社会におけるどの問題にも、多数者と少数者がいます。

自分を<多数者>の側に置くか、それとも<少数者>の側に置くか、そのひとの生き方が大きく反映されたものになります。

<よらばたいじゅのかげ>的傾向を強く持っている人は、<多数者>の側に身を置いて、その通説・一般説に身をゆだね、それ以外のものの見方・考え方に批判的になり、場合によっては排除・疎外することになりかねません。<多数者>の側に身を置くことは、安直であり、易行道です。しかし、なんらかの事情で、<多数者>ではなくなく<少数者>の側に身を置かざるを得なくなったとき、そのひとは、<多数者>から迫害と受難を押し付けられることになります。往々にして、<多数者>は権力を持ち、<少数者>は権力を持たず、その支配下におかれがちになります。

2013年、日本基督教団の隠退牧師になり、妻のふるさと・湖南に帰郷・有機無農薬栽培でコメと野菜を栽培していますが、ひめのもちと各種野菜は、野菜直売所・湖南四季の里に出展しています。筆者と妻の湖南における、郡山市における、あるいは福島県における農法は、<多数者>ではなく<少数者>の部類に入ります。おそらく農業人口の1%にも満たないでしょう。99%の農家は、大型農業機械・化学肥料・農薬・除草剤を多用した<従来型農業>に携わっている人々で、かれらは、<ここらでは、農薬・除草剤を使わないとコメも野菜もつくれねえ>と固く信じ込んでいるようです。筆者と妻が、1%に自分の身を置き、有機・無農薬栽培でコメと野菜を栽培しようとしますと、批判ではなく、誹謗中傷・罵詈雑言などの非難が雨あられの如く、筆者と妻の上に降り注がれます。

湖南で農業をするに際して、筆者と妻は、<少数者>の立場、有機・無農薬栽培という農法を選択して、今年で10年目になります。妻が、有機・無農薬で栽培したメロンやスイカを湖南四季の里に出展しますと、<A子さんの野菜は美味しい>と評してくれますが、それは、四季の里の会員と、四季の里でいろいろ買ってくださる観光客ばかり・・・。<吉田農園が社会的に認められているなら、有機・無農薬栽培が湖南でも普及しているはず・・・。吉田農園以外にどの農家も有機・無農薬栽培をしようとしないのは、吉田農園の農法、営農が他の人々から無視され、否定されている証拠・・・>という物知り農家も少なくありませんが、日本列島における先祖の農の歴史を継承して今日に生かし明日に生きようとするのは、当然といえば当然です。2000年の先祖の農の歴史を忘れ、最近の化学肥料・農薬・除草剤を多用して、農地や農業用水をけがし、<<いま>、農家の所得が増え、消費者が見栄えのいい形の整った食材を安価に入手することができれはいいではないか・・・。それなのに、その従来型農業を否定し、有機・無農薬農法を主張・実践することは、化学肥料・農薬・除草剤を多用して生産性をあげるプロの農家の不利益をもたらすことになる。純然たる農村的地域社会からは、<多数者>の権益を守るためにも、そのような少数者は締め出さなければならない・・・>。そんな、いろいろな非難を馬耳東風のごとく聞き流し、みずから正しいと信じる道を歩み続ける・・・。そこでもたらされる果実は、こころとたましいとからだの健康、安心立命です。

食生活ひとつをとっても、<多数者>と<少数者>の問題は、一筋縄では論じることができません。易業道より難業道のほうが、より真実・真理に近い場合が少なくありません。大型農業機械・化学肥料・農薬・除草剤を多用した<従来型農業>に携わる農家に対する国や地方行政からの補助金はあつく、有機・無農薬で栽培する農家は、例外をのぞいて補助金の対象外である。補助金の有無、法的規制の強化が、有機・無農薬の農家を<少数者>にさらに追いやっている。<有機農法推進法>では、実際に長年、有機・無農薬栽培をする農家が有機栽培、無農薬栽培という言葉を使用することすら禁止している。<有機農法推進法>というのは名ばかりで<有機農法制限法>の側面が強い・・・。それでも、有機・無農薬栽培の農家は、自他共に食の安全と健康の促進を願って難業道を生きている・・・。

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