1冊精読すれば、部落差別問題の全体像を俯瞰できるような本を、1冊あげれば、それは、雑誌『現代の眼』(1981年11月号)・・・。
筆者は無学歴・無資格、部落史研究などの学問とは無縁の存在ですが、日本基督教団西中国教区総会で、部落差別問題特別委員会の委員を押し付けられたことで、少しく部落差別問題との接点を持つ機会が与えられました。その取り組みは、筆者のブログ『部落学序説』とその関連ブログ群に文章化しています。筆者が『部落学序説』で、差別思想と断定している賤民史観の成立過程を知る上で参考になるのが、上記の『現代の眼』です。
<特集 反差別闘争の課題――差別のルーツを追え
1.賤民史観樹立への序章
部落史の再検討がなされている今日、秘められた日本の文明発達の真実を語る”賤民史観”を提起する 沖浦和光・管孝行
2.部落史の始源とカオスの視座 北見憲一郎
3.聖なる感情としての差別意識 岩津洋二
4.差別意識把握の社会学的可能性 福岡安則
5.きりかえしの被差別者像 山岸嵩
6.狭山差別裁判闘争の地平 梅沢利彦
7.宗教界を揺るがす差別問題の実態 丸山輝雄
8.「障害者」という差別と健常者社会 千田好夫
9.「未開放」部落と「被差別」部落 井上清
10.「完全参加」を身近な問題で考える 津田道夫
11.生か死か――残酷な刑法上の差別 丸山友岐子
12.強姦の構造――ペニスによるファシズム 落合恵子
13.四年間の転校運動を省みて 金井律子
14.カーストを支える浄・不浄観
15人の論客による、それぞれの視点・視角・視座からの反差別への提言・・・。1人の著者による部落差別問題に対する俯瞰図の限界をこえて、日本が直面する部落差別問題についての複合的な視点・視角・視座を俯瞰・外観することができます。筆者のブログ『部落学序説』は、1980年代当時の部落差別問題研究、部落史研究を批判的に論じたものです。
『現代の眼』(1981年11月号)の編集後記は、<牢固として日本人の差別意識がなぜ存在しつづけるのか。単に支配・被支配だけでなく、もっと民衆のカオスに波及しなければ何も見えないのではないだろうか>という言葉で結んでいますが、無学歴・無資格、部落史研究とは無縁の筆者は、<支配・被支配>、<民衆のカオス>だけでなく、部落史の学者・研究者・教育者のカオス、部落解放運動のカオスについて批判検証しなければ、部落差別完全解消への道筋をつけることはできないと、彼らに通底している差別思想・賤民史観を『部落学序説』で批判的に論述しています。
2022/09/30
1冊で部落差別問題を俯瞰できる本は・・・
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