牧師と副業・・・
いろいろなケースがあるようです. 私の場合は, 日本基督教団西中国教区の山口のちいさな教会に赴任したとき, 教会の置かれた特殊な事情の下で, 教会役員会から副業を持つことを要求されたことにはじまります.
私が赴任した教会は, 前任者が自害したとされる教会で, 私は教会の閉鎖のために送り込まれた牧師であるようです. しかし, そのことは西中国教区の教会の牧師と信徒の間で共有されておらず, 赴任した直後から西中国教区の教会や信徒から, ”前任者が自害した教会で伝道と牧会ができると傲慢な思いをもっている牧師” と冷たい視線を浴びせられることになりました.
そんな状況の中で, 私は, 西中国教区総会で部落差別問題特別委員会の委員に選任され, 部落差別問題と取り組むことになりました. そのあと, 被差別部落出身者や関係者である教会員の半数が, ”この教会には被差別部落出身者もいるので, 牧師は, どの教会員よりも貧しい生活をしなければならない. よって、謝儀を半額にする・・・” といって, 牧師招聘時に約束していた謝儀額を減額してしましました. あるとき, そのリーダー格の教会員がやってきて, ”牧師にどんな嫌がらせをしても牧師家族がしあわせそうに生きているのを見ると腹が立つ。牧師がこの教会を出て行かないなら, 私たちが出て行く!” と言って, 他の日本基督教団の諸教会に転会していきました. そのとき, 教会役員会は ”薦書” を発行しませんでした.
決定的になったのは, 被差別部落の関係者である教会役員の方がやってきて, 牧師である私に, ”牧師に神の愛があるなら, この書類にサインしてください” と金額の入っていない借用書を持ってきて, 私に書名・捺印を求めてきたのです. 私が丁重に断ると, ”教会員が困っているときに救いの手を差し伸べてくれない牧師がいる教会の信徒でいても意味がない!”, "教会の牧師が被差別部落出身の教会員から献金を求めるのは, 被差別部落から搾取することになり, 差別だ! " と他の関係者を巻き込んで、教会を一斉に離れて行ったのです.
そのあと、教会役員会は分区に謝儀援助を申請しましたが, 分区の総会で否決され, 牧師会は, ”月額500円を出すから, 分区は援助したということにしろ!” との働きかけがあったのですが, 教会役員会は反発, そして牧師である私に, ”今, 牧師にこの教会を離れると, 教会は潰れてしまう. しかし, 残った教会員で十分な謝儀を出すことができないので, 牧師には副業を持ってほしい” と要請してきたのです.
そのとき, 私と教会役員会で、牧師の副業としてどのような仕事がいいのか検討しました. その結果, 徳山市議会で速記者をされている教会書記役員の方からの提案で, 富士通のマイオアシスというワープロを購入して親指シフトというブラインドタッチをマスターして、ディクテータを使って会議録のテープ起こしをする個人会社・K&Y情報記録サービスを立ち上げました. ただし、取引先と取引金額はすべて教会役員会が管理するということで・・・.
しかし, あまり仕事を受注することができず, 教会で, 教会関係者の子弟のための塾をしていましたが, 教会員の御主人が塾を経営していたり、教会の近所に塾があったりといろいろ問題が出てきましたので, 塾はやめることにして, 再度, 副業を探すことになりました. そのきっかっけを作ってくれたのが, 教会書記の役員の方で, 教会の近くの, 山口県立下松工業高校で 1週間の”BASICプログラミングの公開講座” に彼と私の参加申し込みをしてくれて, 二人でプログラミングを学ぶことになりました. その1週間で, 私は, BASICプログラミングをマスタ―することができたのです. 講師の高校教師の方は, ”すごい高速でプログラミンができるのですね. プログラミングの仕事ができますね” と評価してくれました.
それで私は中古のパソコンを入手して, BASIC と dBASEⅢのプログラミングをはじめました. 最初は, 中小企業の会社の既存のシステムの変更, 手直しの仕事ばかりだったのですが, あるとき, 私が参加していた, 被差別部落の中にある隣保館で開催されていた学習会で, その内容を携帯用ワープロで議事録を作成し, それを次回プリントアウトして配布していた部落解放同盟新南陽支部の支部長さんから, ”勤務先の建設会社が建築用積算見積もりプログラムを作成できるプログラマーを探している. 吉田さん, 挑戦してみたら・・・” とアドバイスしてくださり, その会社と話し合った結果, ”日本語データベース桐” の開発言語・一括処理で積算見積もりプログラムを構築することになりました. そのあと, ”原価計算機能付き建築会社用会計ソフト” を作成することになりました. 親指シフトのキーボードと専用辞書を持って、現場で, プログラミングする仕事です.
そのことをきっかけに, dBASEⅢより ”日本語データベース桐” の仕事が増えるようになり, 開発元の管理工学研究所から, ”日本語データベース桐” のシステム・エンジニアを名のることができる資格を授与されました. ”日本語ワープロ松” のインストラクターの資格もあわせて・・・. あるとき, その話を耳にした, NTTの担当者の方がやってきて, ”NTTとNHKの合同の人材派遣会社の仕事を受けてほしい” と言われ, 山口県立東部高等産業技術学校や山口県立東部女性就業センターの, ワープロ (一太郎), 表計算 (Lotus123) ,データベース (桐) の資格取得講座の講師をすることになりました. 教会役員会は, 民間企業でシステム開発するより, 公的職業訓練機関の講師をする方が, 教会の牧師の副業に相応しいとして, ”情報教育” に力点を置くように要望してきました.
あるとき, 山口県立東部高等産業技術学校の職員会議によびだされ, 校長から, ”職員のみんさんが, 吉田さんは公的資格を持っていないと言われるので, ひとつでいいですから, 情報処理技術者試験に合格してください” と言われました. 私は, ”この秋にシステムアドミニストレーターを受験して, 来春第二種を受験します” と全職員のまえで公言しました. そして, 公言したとおりに, システムアドミニストレータ―と第二種に合格しました. 第二種は, C言語で準備していたのですが, そのときの問題は, COBOLの方が易しかったので, COBOLで受験しました. そのとき, 中国新聞が, ”教会の牧師さんはプログラマー!” と地方欄に紙面の半分をさいて報道してくださいました.
牧師と副業・・・. 私の場合は, 私が派遣された教会の特殊な状況がもたらしたもので, 経済的困窮から安直に副業を持ったわけではありません. 私は, 無学歴・無資格 (Academic Outsider) ですが, 日本基督教団の正教師であることも, 情報処理技術者・システムエンジニアであることも, ほとんど独学によるものです. 牧師が, どのような伝道と牧会をすることになるのか, それは, 神によって派遣された教会と地域によって決められる・・・” と Sweden Covenant Mission の宣教師の方々が常々語っておられたことですが, その言葉に従って牧師をした結果が, 牧師とSEという異なる2つの ”職業” を持つことになりました.
私に継続的に仕事を提供してくださったのは, 徳山職業安定所の担当官の方でした. ”職業安定所から送り込む受講生は, 吉田さんの講座の受講生にしてください” との要望が山口県東部女性就業センターに寄せられたからです. いわば、私は, 職業安定所の下請け・・・. 10年間で800名近い方にパソコンの指導をしました. 山口県東部高等産業技術学校の担当者の方は, 講座が始まる前に、何時も, ”吉田先生は, 日本基督教団の牧師です. パソコンだけでなく, いろいろ相談したいことがあればなんでも相談してください・・・” と紹介してくださいました.
私が公的資格を持っていないとクレームを出した山口県東部産業技術学校の教師たちは, 校長の ”吉田さんは情報処理技術者試験のシスアドと第二種に1回で合格しました. 今度は, あなたがたの番です. なにかひとつでもいいから情報処理技術者試験に合格しください” と言われ, 全員受験したそうですが, 見事に全員不合格だったようです.
牧師が副業を持つには, 主なる神さまの導きと教会の支えが必要です. 祈りの中で副業を行なう必要があります.
2023/12/05
牧師と副業・・・
登録:
コメントの投稿 (Atom)
讃美歌自動演奏機にあわせてクリスマスキャロルを歌う・・・
讃美歌自動演奏機にあわせてクリスマスキャロルを歌いました. 2013年4月1日に日本基督教団の隠退牧師になるとき, 退職金を放棄して30年間つとめていた教会を離れましたが, 宗教法人解散の手続きをしているとき, 教会役員会から, "なにかひとつ記念にな...
-
猪苗代から戻ると、筆者と妻、すぐ着替えて農作業をはじめました。 妻は、段々畑の梅の木のある畑に作付けしたキュウリとインゲンの支柱のネット張り・・・。筆者は、棚田のひめのもちとはえぬきの田の草取り・・・。午後1:30~4:00、市販の農具を改造してつくった <水田熊手>型草取り器を...
-
今朝、読んだ『英訳聖書』(NSRV)のことば・・・。 I have also seen this example of wisdom under the sun, and it seemed great to me. There was a little city with fe...
0 件のコメント:
コメントを投稿