秋の田の我が刈りばかの過ぎぬれば雁が音聞こゆ冬かたまけて
ぬばたまの夜渡る雁はおほほしく幾夜をへてか己が名を告る
秋風に大和へ超ゆる雁がねはいや遠ざかる雲隠りつつ
『万葉集』に出てくる<雁がね>の歌は多い・・・。<雁>は、カリ・カリガネとも呼ばれ、日本に秋に北から渡りをしてくる<雁>は、マガンが多い(東京堂『動物の事典』)万葉集の上記3つの歌から想像するに、マガンは、コハクチョウと同じく、稲刈りを終えたころ猪苗代湖畔の田に渡りしてきたようです。数百羽の群れをなして行動するようですが、昨日は、雨が降るなか、田でコハクチョウの群れと入り混じって落穂ひろいをしていたのでしょう。休憩と栄養をとったあと、マガンの群れは、夜、次の場所へ飛び立っていったのでしょう。その飛び行く先は、東北からはるかにはなれた大和の国・・・。鄙びた里をあとにして、当時の都のある大和の国に飛び立つ雁・・・。都をなつかしむひとにとっては、とてもうらやましい姿に見えたに違いありません。大和の言葉は、事物を指す単なる記号ではなく、古代の人々の情景と心情語るためのこころとたましいのことばです。
2021/11/15
秋の田の我が刈りばかの過ぎぬれば・・・
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