2022/02/09

朝は『英訳聖書』(NSRV)、夜はヤスパース著『哲学』を通読・・・

朝は『英訳聖書』(NSRV)、夜はヤスパース著『哲学』は通読・・・。今年に入ってから、すっかり、そのパターンが定着してしまいました。

哲学者ヤスパースは、<実存的世界の拡大は・・・外部から私に課せられた課題・・・私は大胆にこのような現存在領域の中に私自身を入れるのであるが、このような大胆さこそ、私の歴史的意識を生ぜしめるものである>といいます。筆者にとって、<部落差別問題>との取り組みは、筆者自身に由来するものではなく、日本基督教団西中国教区の山口のちいさな教会の牧師をしているとき、西中国教区総会によって押し付けられた課題以外の何ものでもありません。それを仕組んだ牧師たちは、筆者に抱えきれない重荷を負わせて潰すのが目的であったようですが、高校生のときからヤスパースの哲学に影響を受けていた筆者は、潰されることなく、その課題の壁を突破することを指向しました。そのことで、筆者、それまでの神学・医学・法学・哲学の知識・技術に加えて、歴史学・古文書学・民俗学・人類学・社会学・心理学・政治学などの他の分野も学ぶことになりました。特に、歴史学的研究法について・・・。そのことが、筆者の<歴史的意識>を強化することになったのでしょう。他者の歴史を調べることで、筆者自身の歴史についてもだとりつくことができるようになりました。

筆者が、<外部から私に課せられた課題>に真剣に取り組むことがなく、適当に在任期間を過ごし、その課題を担うことなく通り過ぎてしまったとしたら、筆者は、<歴史的意識>を自分のものにすることができたかどうか、確信はもてません。<外部から私に課せられた課題>、それを筆者に課した人はなにも身に着けなかったかもしれませんが、その課題と真剣に向き合った筆者は、主なる神さまによって、歴史の大道ではなく、けものみちを通ってそのいただきにたどりつくことができる知識・技術を与えられたのです。

『部落学序説』を執筆するとき、部落史の学者・研究者が作り出した悪しき二分法である<被差別部落>の立場から断定される<差別者>として、執筆をし続けました。筆者の中には、<被差別者>として語りうるものをなにも持っていませんが、『英訳聖書』(NSRV)と『哲学』(全3巻)を一緒に通読することで、ユダヤ人として歴史的差別を受けている人々の置かれた状況とその状況の中で生きるための闘いをしている人々の精神的葛藤を知り、共感を覚え、それを自分のものにすることができました。日本の被差別部落の人々の置かれた歴史的状況とその状況の中で人として真実に生きようとしている人々の精神的葛藤もよりよく理解することができる道に通じているのかもしれません。特殊なものが一般に還元されるときそれは無に帰してしまう。特殊なものが特殊として、その歴史を自らに引き受け、特殊ではなく一般を乗り越えてしまうとき、真の被差別からの解放を達成することができる・・・。

生粋のドイツ人である哲学者ヤスパースが生粋のユダヤ人であるその妻との間で培っていった『哲学』は、筆者の生き方のなかに、ものの見方、考え方の中にすっかり融合してしまっているようです。

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