2024/05/07

読んでいて楽しい "The Oxford Guide to Family History"・・・

    昨夜, "The Oxford Guide to Family History" のページをめくっていました. 

    "Family History" は, 家族の歴史・家の歴史・先祖の歴史, 自分史の総称であるようですが, 20世紀の最後の数十年に, イギリスやアメリカだけでなく全世界で, "Family History" の関心が高まり, 多くの人が自分のルーツを調べ始めたようです. 

    ところが、日本の同時期においては, 公教育において,  "Family History" を調べることに対して否定的な見解が多くみられます. とくに, "人権教育" を掲げる教育実践において、ある特定の人々の "Family History" を調べることは, それが他者の "Family History" であれ、自分の "Family History" であれ, "差別行為" になると指導されていました. 特に, 被差別部落の生徒に対しても, 彼らが受けている差別は, "いわれなき差別" であり, その "いわれ" を調べてはいけないと・・・. そして, こともあろうに, 各都道府県の公立の古文書館ですら、その "Family History" を調べるのにひつような史資料を "差別文書" として隠蔽してしまったからです

    部落差別とは, 被差別部落出身の人々からその "Family History" を奪う, 教育上, 歴史教育上の差別, 教育行政上の差別システムに他なりません. 近世幕藩体制下における "穢多" 役, "非人" 役は, 当時の司法・警察官であり, 社会の治安と安定のために貢献していた, 現代の警察官と同じ, 尊敬すべき存在でした. 明治維新にともなう急速な日本の欧米化とそれにともなう外交上の問題で, 明治政府は, 旧司法・警察制度を解体する必要に迫られ, 近世幕藩体制下の司法警察である "同心", "穢多", "非人" を解体, その一部を近代警察の中に取り込みながら日本の近代警察を構築していったのです. 

    日本の左翼主義思想家や運動家が主張するような, "穢多・非人は, 賤民の末裔である" という差別思想・賤民史観とは相容れない, 彼らの歴史の信実が横たわっています.  "穢多・非人" の末裔が,  "Family History" を自ら調べ, その歴史の真実を知っていくことは, 日本の社会から部落差別を完全解消する道へとつながっていきます. 

    "Family History" は, 趣味や, 人生の晩年における余暇利用などによって明らかにされるような内容ではありません. 自分の全存在をかけた、人生の探求でもあるので, その人の持てる力を全力で発揮しなければたどりつくことができません. 

    私の先祖は, 信州栗田村の真言宗観聖寺の住職・修験僧の家系ですが, 明治政府の廃仏毀釈・政教分離政策によって, 伊勢神宮の神宮寺であった伊勢の世義寺の信州における末寺であった観聖寺は, 中本山の世義寺と共に廃寺に追い込まれ歴史から抹消されてしまいました. 世義寺はほとんどの史資料が廃棄・焼却処分にされ失われてしまったようですが, 観聖寺は, その難を免れ, "観聖寺文書" として残され, その末裔である私も読むことが許されています. 現代の歴史学者による一般説・通説とは異なる姿が描かれている場合も少なくありません.  "Family History" は, 自分で調べる以外にその事実・真実にたどりつくことは出来ないのです. 

    日本基督教団西中国教区の山口の小さな教会の牧師をしていたとき, 部落解放同盟新南陽支部の支部長さんに頼まれたその被差別部落の歴史を調べたことがありますが, そのとき参考にしたのは, 解放出版社発行の藤林普一郎著 "身元調査" です.  真面目に, "Family History" は調べようとする被差別部落の方々にとっては最適な案内書です. この本と,  "The Oxford Guide to Family History" を合わせて読めば, より客観的に "Family History" を調べることが可能になるでしょう

    無学歴・無資格 (Academic Outsider) の私ですら, "Family History" を調べ先祖の歴史にたどり着くことができたのですから, Affirmative Action によって高学歴・高資格を手に入れた "元被差別部落出身者" の方々にとっては, より簡単にその "Family History" にたどりつくことができることでしょう. 日本の社会から部落差別を完全解消するための最も効果的で最短で合理的な道は, 被差別部落の人々が "Family History" を自ら明らかにしていくことにあります. 

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