日本基督教団西中国教区の山口のちいさな教会の牧師をしていたとき、部落解放同盟新南陽支部の支部長さんに求められて、その被差別部落の在所と歴史について調べることになりました。
しかし、その当時、<被差別部落について調べることは差別である>という一般通念・一般観念に拘束されていた私はその支部長さんの依頼を受けることはできないとお断りしたのですが、支部長さんがあまりに熱心に求められるので承諾することになりました。
そのとき被差別部落の探訪と調査のために使用した文献のひとつに解放出版社から出された藤林普一郎著『身元調査』があります。 部落解放同盟新南陽支部の支部ちょうさんから求められたことのひとつに、<差別者がどのようにしてこの場所を被差別部落として知りうるのか、その過程も知りたい>というのがありました。 それで私は生まれてはじめて被差別部落の調査をすることになったのですが、調査にあたって読んだ参考資料のひとつが藤林普一郎著『身元調査』です。
この本は部落解放同盟の出版社・解放出版社から出版された本なので特に問題はないだろうと思って『身元調査』を精読することにしました。 藤林普一郎著『身元調査』は、ただしく使えば、被差別部落の青年たちが先祖の歴史を調べそれを継承して生きて行こうとするときにはとても役立つ本です。
第1章 身元調査報告書からー問題の所在
第2章 興信所・探偵社
第3章 戸籍簿の「公開」と差別
第4章 住民票とその他の公簿と「公開」
第5章 コンピューター化社会とプライバシー保護対策
付録 身元調査関係資料
AmazonとBOOKOFF ONLINEでは入手付加、日本の古本屋ではまだ3冊入手可能です。 藤林普一郎著『身元調査』はまだ差別文書にも閲覧禁止・削除処分の対象にもなっていないのでしょう。 藤林普一郎氏は<身元調査は悪魔の使い>といいます。 しかし、その方法と実態を明らかにしまとめられた『身元調査』は<両刀の刃>になりかねません。『身元調査』が解放出版社から出版されたのは1985年・・・。 <日本が近代社会に入ってから百十余年になるが、まだまだ公的社会から「社会的弱点」を探し出す悪しき社会慣習は消去されていない。 一日も早く、日本の社会が人の足を引っぱることに社会の大きなエネルギーを傾けるという後ろ向きの姿勢を改ねばならないと思う>と藤林晋一郎氏が綴ってから40年になろうとする現在においても<悪魔の使い>は部落解放運動の内外で暗躍を続けている・・・。
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