筆者の『部落学序説』を英訳することを断念したのは、『部落学序説』の文章があまりにも日本語的だからです。
日本語の主語や目的語が不明確なのは、日本の精神風土の中ではそれなりの意味があるのかもしれません。きちんと批判しなければならないときに、その読み手の受け止め方を慮て、薬をオブラートに包んで服用するような表現をしたり、比喩的表現であいまいにしたり、言外の意味をもたせたり・・・、そのような表現は、English Writing に適用させることはできません。English Writing には、論理性が要求されます。それで、筆者、『部落学序説』をそのまま英訳するのではなく、あらたに、『Research on Buraku Discrimination in Japan』を執筆することにしたのです。
夜、『アーレント=ヤスパース往復書簡』を読んでいて、原書を他の言語に翻訳することの難しさを知らされました。
ブログ『部落学序説』を公開で書き下ろしをはじめたときの参考となる史資料・論文の質・量と、English Writing で『Research on Buraku Discrimination in Japan』を執筆しようと思いたったときの質・量はかなり違いがありますし、ブログ『部落学序説』は、部落差別問題に何からの接点がある読者を想定して執筆したのと違って、English Writing の『Research on Buraku Discrimination in Japan』の場合は、日本の部落差別について、ほとんど前知識のない一般の人をも対象にしなければなりません。筆者自身の英語力にも<不安>がありますが、哲学者ヤスパースは、アーレントとの往復書簡の中で、<不安(舞台恐怖症)があるのはいいことですよ。それがなくなったら、自分に満足して慣れた水のなかを泳ぎまわるだけになり、自分の亜流になりさがるでしょう>とアーレントに書き送っています。
English Writing の『Research on Buraku Discrimination in Japan』は、ブログ『部落学序説』の内容を、より発展的に超克する必要があります。昨夜、目を通していた、西日本の<〇〇町部落史資料集>も筆者に同じことを要求してくるように思われます。<思われます>なんて曖昧な表現を使わず、<I think ・・・>と言い切ったほうがいい・・・。<自分の亜流になりさがらないように>するためにも・・・。
2022/10/21
自分の亜流になりさがらないように・・・
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