昨夜、ヤスパース著『真理について』(全4巻)を読んでいましたら、<沈黙の因襲>という言葉が出てきました。
その文章を前に、筆者、<部落問題>、<部落差別問題>について、いろいろ考えていました。日本基督教団西中国教区の山口の小さな教会の牧師をしていたとき、筆者、西中国教区総会で部落差別問題特別委員会の委員を押し付けられ、部落差別問題にとりくむことを強制されました。当時の委員長からは、山口の被差別部落に入って活動するように求められていましたが、門外漢である筆者には、それはほとんど不可能なことがらでした。被差別部落の側も、どこの馬の骨かわからない筆者にこころを開いてくれる可能性はほとんどなかったから・・・。
公立図書館で、山口の被差別部落のことを調べようと思っても、本の題名に<部>のつく本はすべて閲覧禁止処分にされていて、閲覧することはできませんでした。部落問題については、<触れるな、触るな、近寄るな>政策が徹底されると共に、同和対策審議会答申の部落問題に関する教説を疑念を持たずに正しい認識として受容することが求められていました。同和対策審議会答申でいう<国民的課題>とは、国と運動団体がまとめた教説を無条件に無批判的に国民は受け入れなければならないという強制でもあったようで、すべての同和対策事業が完了されたあとにも、同じ状況が繰り返されています。
哲学者・ヤスパースは、そのような状況を<沈黙の因襲>と呼んでいるわけです。<沈黙の因襲>を破り、そこから抜け出し、被差別部落のほんとうの歴史を取り戻すためには、どのような認識にたたなければならないのか、ユダヤ人差別と闘う哲学者・ヤスパースは、<沈黙の因襲>批判の文章の中で綴っています。
左翼思想に基づく部落解放運動は、被差別部落の人々とを<因襲>から解放すると宣言しながら、ほんとうに解放するための闘いはしないで、別の<因襲>を、被差別部落の人々に押しつけているのです。ロシアが、ウクライナ人民をネオナチの圧政から解放するための軍事作戦を遂行すると宣言しながら、実際はウクライナ解放戦争は名ばかりで、その本質はウクライナ侵略戦争そのものであり、ウクライナの国土を爆撃で荒廃させ、ウクライナ国民を殺戮し、その文化と社会を徹底的に破壊し焦土化するだけ残虐な侵略戦争でしかないのと、同じような発想が、いろいろな分野で、日本の左翼思想の学者・研究者・運動家の中にも見られます。
哲学者・ヤスパースが語る、<沈黙の因襲>から脱却するには・・・
2022/11/09
部落問題は、<沈黙の因襲>・・・
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