今年に入って読んでいるヤスパースの『哲学』(全3巻)は、ヤスパースが実証主義と観念論について批判を展開いている箇所です。
高校生のときから、ヤスパースの哲学書に触れてきて、大きな影響を受けてきた筆者は、実証主義にも観念論にも大きく傾くことはありません。両者の中道ですらなく、ヤスパース実存的傾向を持っています。
今回時間をかけて読んでいるのは、<実証主義的歴史研究>の限界を見定めるため・・・。<実証主義的歴史研究>は、既存の歴史資料・遺物を研究対象にしています。文献で確認できる範囲での歴史研究においては、あらたに史資料が発見され解読されて、それまでの歴史研究の方向性の見直しを要求されることが度々起こります。日本の部落史研究者が直面することになる<実証主義的歴史研究>の限界です。それらを無視あるいは過小評価して観念論的歴史哲学を構築することにも限界があります。両者は、その研究の視野に入らないものを<ないもの>として無視するのが常ですから・・・。筆者が『部落学序説』で部落史研究の解釈原理として導入した<新・けがれ論>や<非常民・論>なども、部落史の実証主義的研究や観念論的研究の枠外にあるものです。『部落学序説』をかきはじめたとき、東京外国語大学の教師の方が、『部落学序説』の研究目的と研究法そのものが、日本の学界の中でとりあげられ評価されることはなく、すべては徒労に終わると評されていました。筆者は、無学歴・無資格者として、<部落学>的論述をはじめたのではなく、<部落学>固有の研究課題・研究方法を明らかにして<部落学的論述>をすると<序説>(Prolegomena)を書き始めたのですから、『部落学序説』の執筆を中止することはありませんでした。そして、これからも・・・。
2022/01/09
ヤスパースの実証主義と観念論批判・・・
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