2021/12/08

われわれは他の人々にやどる可能性を、われわれ自身のなかに耕して行かねばならぬ・・・

筆者は、高校生のとき、教科書以外に600冊の本を読みました。高校1年生のときは300冊、2年生のときは200冊、3年生のときは100冊・・・。筆者はいろいろな事情で大学進学の夢をかなえることができませんでしたが、その読書経験は、高校をでたあとも、筆者を独学へと駆り立てました。

高校1年生のときに読んで、こころにのこり、その後、筆者のよりどころとなった言葉に、小説家ハンス・カロッサの<われわれは他の人々にやどる可能性を、われわれ自身のなかに耕して行かねばならぬ>という言葉があります。ハンス・カロッサ著『美しき惑いの年』の一節です。

<いっさいがより軽くより清純であるその世界に住んでこそ、われわれは過酷な騒がしい人生の中にあって、心底の願いを実現することのできなかった孤独の人々を、もっともよく理解することができるようになるであろう。それによって、たぶんわたしたちは、わたしたち自身の存在によってそういう人々の生の完成を進めて行くことができるのではあるまいか。そのことはわれわれ自身の天性への最も美しいおぎないとなるであろう。われわれはわれわれ自身については知ることが少ない。われわれの精神的な目は、われわれ自身を直接に認識できないような構造をもっているらしい。われわれは他の人々にやどる可能性を、われわれ自身のなかに耕して行かねばならぬ。そこからよい収穫が生まれ出るであろう。そしてわれわれは、その際われわれの払う労苦によって、われわれ自身に固有のものを、最も早く知ることができるであろう>。

筆者の蔵書の中では、めずらしく、何の書き込みもない本です。

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