本田豊著『被差別部落の民俗と伝承』・・・。
今日から第2章に入っていますが、この第2章には、部落史研究者・本田豊が聞き取り調査をした被差別部落の住人のうち、34人の証言が収められています。
部落史研究者の本田豊は、聞き取り調査をしたとき、<部落解放運動に関係した人>と、部落解放運動に<関係しなかった人>との間には、大きな違いがあるといいます。本田豊は、<これは何を意味するのでしょうか。じっくりと考えなければならない課題、と思われます>と記していますが、<被差別部落>という言葉自体、左翼思想家が作り出た言葉で、左翼思想の学者・研究者・教育者が、どれだけ<被差別部落>という概念でくくられることになる<外延>のことを理解、把握していたのか・・・、おそらく、彼らは左翼主義の運動の中で視野に入る人々だけに注目して、運動の枠外にいる人々の言葉にあまり耳を傾けていなかったのではないかと思われます。
部落史研究者の多くは、<被差別部落>に直接身を運んでその歴史を調べたのではなく、大学や図書館、文書館の研究室で史資料だけから、被差別部落史を描いて行ったのではないかと思われます。その点、部落史研究者でありながら、<被差別部落>の民俗学的調査をした本田豊は、特筆すべき部落史研究者です。本田豊が聞き取り調査をした34人の<被差別部落の古老>、<部落解放運動に関係した人>も<関係しなかった人>も、興味深い話が多いのですが、本田豊自身は、左翼思想家がつくりだし、被差別部落の人々に押し付けた、差別思想<賎民史観>に身をどっぷりとつけていますので、せっかくの聞き取り調査が的を外したものになっていることは残念です。本田豊は、<語り部の話(の)・・・内容に深浅があるのは、ひとえに聞く側の知識が乏しいため>と記していますが、<乏しい>のは<知識>ではなく、<被差別部落>の古老と向かい合うときの本田豊の視点・視角・視座が差別思想・賎民史観に収斂されているためではないでしょうか・・・? 部落史研究者の本田豊が、自らを差別思想・賎民史観から解放し、古老の語る伝承の中にある歴史の真実を掘り起こすことができれば、これまでの研究は、面目を一新し、<部落解放運動に関係した人>にも<関係しなかった人>にも、おおきな力になるのではないでしょうか?
2021/12/06
被差別部落34人の証言集・・・
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